日本のサッカー選手は身長が足りないと言われる。
巷間伝えられるところによれば、ハリルホジッチ監督は長身のフォワード(FW)とゴールキーパー(GK)にご執心だそうである。
まずは、実際に日本代表が身長が足りないのかどうかを検証してみよう。
海外で活躍した主な日本人選手の身長を見てみよう。
このうちグレーは180cm以上、水色は185cm以上を表す。
これを海外勢と比較してみよう。
下の表は、2014年のW杯の初戦に先発した各国のメンバーの平均身長である。
(GKはゴールキーパー、FPはそれ以外)
優勝したドイツは身長でもずば抜けている。先発11人のうち、身長が180cm以下なのはラーム(Philipp Lahm)とゲッツェ(Mario Götze)の2人だけで、190cm以上の選手が4人もいる(ノイアーManuel Neuer、ボアテングJérôme Boateng、メルテザッカーPer Mertesacker、フンメルスMats Hummels)。
それ以外と比べると、それほど遜色ないようにもみえる。
ブラジル代表の先発メンバーに190cm以上の選手はいなかった。
とはいえ、確かに強豪国と比較すると日本はやや低い。
だが日本人でも長身のアスリートは存在する。サッカー選手に少ないだけだ。
野球でアメリカ合衆国でプレイした有名な選手を見てみよう。
黄色は190cm以上だ。主だったメジャーリーガーは少なくとも180cm以上はある。
185cmない選手は例外と言っていいぐらいだ。
そうした高身長の日本人のアスリートは、現時点では野球をはじめとする他のスポーツで才能を発揮しているといえるだろう。
だが現在、日本では子供の競技人口が最も多いスポーツはサッカーだそうだ。
近い将来、長身のサッカー選手が陸続と現れてくるのだろうか。
だがここで、アメリカ合衆国のメジャーリーガーの身長と、ヨーロッパの主要リーグのサッカー選手の身長を比較してみよう。
見ての通りで、野球と比較してサッカーは身長が低いように思える。
もっとも、これはよっくすの印象で一部をピックアップしたものだから、偏りがあるかもしれない。
そこで、チーム全体の身長を比較してみよう。
野球は、日米4リーグの優勝チームの、開幕戦の先発メンバーの平均身長だ。
サッカーは、2016-2017年のUEFAチャンピオンズリーグの準決勝の進出した4クラブの準決勝1stレグでの先発メンバーと、2017年Jリーグの上位4クラブの開幕戦での先発メンバーの平均身長を並べた。
意外にも日本では野球とサッカーの身長には期待したほどの差がなかった。
だがUEFAと比較するとMLBは明らかに高い。ヒューストン・アストロズの平均身長は184.8cmと低いように見えるが、これはアルテューベ(José Altuve、168cm)と青木(Aoki Norichika、175cm)という2人の小兵を含んだうえでの数字だから驚く。
アストロズの先発メンバー10人(指名打者を含む)のうち185cm以上は6人、うち4人が190cmを超えているのだ。
対するドジャースは190cm以上こそ9人中2人だが(ナショナルリーグには指名打者制がない)、185cm以上ならば7人とアストロズを上回る。180cm以下は両軍合わせて19人中3人。
一方で、UEFAは4クラブ合わせて44人中で185cm以上は20人、190cm越えはわずかに5人。5人のうち2人はゴールキーパーだ。その一方で11人が180cmを下回っている。
ヨーロッパの多くの国では野球よりサッカーが盛んだから、高身長選手が野球に流れるなどということは考えられない。
おそらく、サッカーと比べると野球は身長がより大きくものをいうのだろう。そしてその理由は、言い古されたことだが、野球はサッカーはパワーが必要で、サッカーは野球より俊敏性が生きるということなのだと思う。
体重を見ればもっとはっきり傾向が出るのかとも思うが、今回はそこまで調べる余裕がなかった。
とはいえ、俊敏性に加えて長身があれば鬼に金棒であることは、よく言われるところである。
上表ではGKを特に書き出したが、GKは日本ですら185cm以上の高身長選手が主流である。
DFも身長は重要だ。
上記の通り2014年W杯の初戦でドイツ代表は190cm以上の選手を4人並べたが、その内訳はGK1人にディフェンダー(DF)が3人であった。
それに加えて、たとえばレアルマドリードではクリスティアーノ・ロナルド(Cristiano Ronaldo、187cm)とベンゼマ(Karim Benzema、187cm)、ユベントスではイグアイン(Gonzalo Higuain、186cm)とマンジュキッチ(Mario Mandžukić、186cm)といった長身の選手を前線にも配していた。ユベントスは身長もMLB級だ。
このように、サッカーでは小兵でも生きる道があるために平均身長は野球よりも低いが、大男の有用性はやはり存在する。
そして日本人の中に高身長選手の資源は存在する。
数で言えば、たとえば人口336万人のウルグアイよりも多いのではないだろうか。
先にふれたように日本の子供の指向は既に野球からサッカーに触れているのだから、もう10年もすれば、日本代表にも高身長選手が続々と加入してくるだろう。
その芽をつぶさずに育ててほしいものだ。