早いもので、南伊豆町石廊崎の本瀬、渡船屋の庭先に佇む河津桜が少し以前から見頃を迎えている。
河津桜の本場とも言える河津の桜、あるいは南伊豆町下賀茂の青野川に沿って連なる河津桜などとは違って、ここでは1本だけぽつんと植わっている。
だがこの桜は早咲きの河津桜の中でもとびきり早く、今年も先陣を切って見頃を迎えている。
(石廊崎地区の本瀬の河津桜)
石廊崎地区は暖かい。
特にそれを感じるのは冬の朝だ。
対照的なのが南伊豆町の入り口、青市地区だ。
(青市地区。山に囲まれた盆地である)
温暖な南伊豆町にあっても、冬の青市地区は毎日のように霜が降り、氷点下に下がることも珍しくない。
寒いのはたいていよく晴れた朝だ。
さすがに伊豆半島だけあって、極端に寒くはならないが、氷点下3℃ぐらいにはしばしばなる。
そんな日でも、青市地区を出発して手石地区の小稲集落に至ればおよそ1℃、石廊崎地区では2~3℃ぐらいになっている。
青市地区から小稲集落まではおよそ4km、石廊崎地区はそこからさらに4kmほどだ。
自動車ならわずか10分の距離である。
(青市と石廊崎。「長津呂」が現在の石廊崎)
もっとも、冬の朝でも、青市地区と石廊崎地区の気温差がほとんど無いような日もある。
そんな日は、たいてい強い風が吹いているか、そうでなければ雨が降っている。
晴れて風がない朝は、青市は寒い。しかし石廊崎はそうではない。
その原因は、海しか考えられない。
(石廊崎地区の本瀬の海)
青市地区は、海からわずか3km。
たったそれだけの距離でも、海の恩恵を蒙るには遠いらしい。
だが逆に言えば、海が無ければ本来はそのぐらい寒いのだろう。
黒潮に向かって突き出す伊豆半島。
その先端に佇むあの河津桜は、伊豆の海に最も愛された桜だったのだ。
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