この春、カーリングのテレビ中継を契機に、日本のいちごの品種が韓国に流出していることが問題になった。

日本の品種が「韓国の品種」として売られているとしたら不本意ではあるが、農水省の説明を読む限りでは、今回の件に関しては無断で流出すること自体は法的にはやむを得ないようだ。

もともとは無断で入手した日本が開発した品種の苗によるいちごを韓国の品種と称して売っており、それに気づいた日本からロイヤリティの支払いを要求されると、今度は日本産の2種類の品種をかけあわせて韓国の品種とすることでロイヤリティの支払いを逃れた、ということのようだ。

これからはこういうことが無いように、という注意喚起がされているようだが、こういうものは、良いものであればどんな手段を取ってもいつか必ず流出する。

はからずも「日本が開発したいちごは海外でも売れる」ということを韓国が証明してくれたので、これを契機に輸出にも力を入れたらいいのではないかと思う。




さて、国内での最大のいちご産地は栃木県で、全国の15%を占める。「とちおとめ」の名は全国に轟いている。2位は福岡県。こちらは「あまおう」であろう。

では、いちごの本場、栃木県では、いちごはどのくらい栽培されているのだろう。

農林水産省の統計を見てみよう。(水色は田。茶色は畑)

栃木県の耕地面積の78.1%は水田である。

栃木県でのいちごの作付面積は0.5%にすぎない。

市町村別にみても事情はたいして変わらない。

最もいちごの生産量が多い真岡市でも、耕地面積の83.7%は田だ。いちごの作付面積は全耕地面積の2.2%に過ぎない。

栃木県全体で見ると、米といちごでは面積で100倍、収穫量で12倍の開きがある。

統計情報では生産額がいまひとつわからなかったが(見落としたかもしれない)、仮に米のkg単価を217円、いちごを1,250円とすると、栃木県全体での生産額は米が6,374万円、いちごが3,138万円となる。

面積には大きな開きがあるが、生産額ではじつはそれほどの差が無いのだ。

面積あたり収入でいえば、米は1haあたり1,103円に過ぎないのに対していちごは53,541円にもなる。

それならばいちごの方が有利では無いかとも思えるが、おそらくいちごは稲作と比較してかなり手がかかるので、経営可能な面積には大きな開きがあると思われる。

米作りは、サラリーマンから農家まで多くの人が副業でやっているが、いちご作りは基本的にはそれを主戦場にする場合が多いのではないか。

(このあたりの事情は農家では常識だろうが、よっくすは知らない)

いずれにしても、面積ベースで見ても、収穫量ベースで見ても、米は圧倒的にいちごより大きいのだ。

米作りは古くからの歴史があるし、灌漑設備が整備されて水利権が既得権として整理されており、おまけに近年まで国家に管理されていたのだから、良くも悪くも非常に安定していた。

改めて他の品目に投資するよりは当面の安全性が高いのだろう。

おまけに米は日本の主食の地位を確立しており、いちごより遙かに大きい国内市場が存在する。

安定した大きな内需が存在するということは、国家レベルで見れば、波動的な国際市場に打って出るためには非常に有利な条件だと思うのだが。

国際市場で勝てない理由は価格なのか、品質なのか。

そしていちご。上に見たように、作付面積あたりの収益では米を圧倒する。

(投入労働力あたりで見たらわからないが)。

この事実は、少なくとも栽培用の土地という観点では、かなりの伸びしろがあることを意味する。

市場さえあるならば、どれだけ新規参入があっても、栽培用地が枯渇することはない。

そしていちごの作付面積が増えれば、それだけ栃木県の農業生産額も向上するというものだ。

日本にも耕地面積中の稲作の割合が比較的小さい県は事実として存在する。

ここでは傾斜地が多い等の理由で稲作に向いた平地が少ない3県、静岡県、和歌山県、鹿児島県の例を挙げよう。

各県、特色のある農産物を生産している。

 

スポンサーリンク