蜘蛛の糸。
悪人カンダタが、一匹の蜘蛛を助けたことを持ってお釈迦様に慈悲をかけられて、地獄から救われるために蜘蛛の糸を登ろうとする話である。
どうやって登ったのだろうか。
よく考えてほしい。具体的に手と足をどのように使えば蜘蛛の糸を登れるというのか。
まず、足を掛けるところがない。
はしごを登るようなわけにはいかないのだ。
二本の足で蜘蛛の糸を挟むだろうか。
挟めるだろうか。特殊な靴でも履けば可能かもしれないが、地獄から登るのだからおそらく裸足だろう。
しかも、糸を挟んでそこで体重を支えなければならない。
とても無理だと思う。
手はどうか。
二本の手で糸を握るのか。
繰り返すようだが、握って自分の体重を支えなければならないのだ。
しかも、上に見たとおり、足の力は頼りにならない。
両手両腕で全体重を支え、しかも登っていくとなると、相当な腕力が必要だ。
普通の人には無理だと思う。
カンダタは、下から大勢の人が自分を追って登ってくるのを恐れて暴れたわけだが、何も焦ってじたばたせずとも、登れる人はほとんどいなかったのではないだろうか。
さらに気になるのは糸の太さだ。
蜘蛛の糸は細い。まずこれをつかむ時点で至難の業だとは思うが、だからといって手に巻き付けて登るのもかなり問題がある。
人間の体重を支えるほど強靱で、しかも細い糸を手に巻き付けて全体重をかけたらどうなるか。
おそらく手は血まみれだ。
悪くすると手の方が切れてしまうかもしれない。
このような特殊な糸を使って、かつ安全に登ろうと思えば、全身をミイラ男のようにぐるぐる巻いて、上からお釈迦様が引き上げる、というような共同作業が必要なのではないだろうか。
物語では、カンダタが下から登ってくる人々を振り落とすために暴れて糸が切れてしまうかのように描かれていたが、実際には全身ぐるぐる巻きにされて、窒息して苦しさのあまりに暴れたのだろう。