路面電車というか、LRTである。

LRTとは、Light rail transitのことである。軽量軌道交通である。

かならずしも路面を走る必要は無い。定義によっては静岡鉄道静岡清水線のように、全線専用軌道を走るようなものを含める場合もあるらしい。




さて宇都宮に新しいLRTが建設される計画がある。【宇都宮LRT構想

とりあえず、JR宇都宮駅東口からいくつかの工業団地を結ぶ計画のようだ。

鬼怒川を渡る区間などは専用の軌道となるようだが、駅付近は路面を走るようだから、これも路面電車と称してもよかろう。

ついで西側に延伸し、東武宇都宮駅の近くを通って作新学院の方向へ向かう計画となっている。

どちらも、鉄道空白地帯となっているので、大いに期待がかかる。

実はもう着工している。

宇都宮駅東口の工事現場

現状でもバスが頻発しているが、バスは定時性に劣るだけで無く、系統が多様すぎて、慣れないとどれに乗って良いのかわからないという問題点がある。

が、そうは言ってもLRTが完成すれば万事めでたく問題が解決するというものでもない。

そもそも電車はバスより不便な点を持っている。

たとえば、バスよりも停留所の間隔が広がりがちだし、路肩まで寄ってきてくれるバスとは違って路面電車、ないしLRTの路面区間では、停留所がある道路中央まで歩いて行かねばならない。

また当然だが、線路が引いてあるところしか走れない。バスよりも柔軟性に劣るのだ。

事故があっても迂回運転もできない。

道路の一車線をつぶしてしまうのも問題だ。

それでもLRTができれば、渋滞する道路よりも多少は高速化するし、バスよりは多少は輸送力がアップする。

渋滞する宇都宮東武前。ここにもLRTの延伸が計画されている

だが実は、本来鉄道のメリットとなる部分に法律の網がかぶっている。

すなわち、軌道法では、併用軌道(道路上に敷設される軌道)では、速度は40km/h以下、車両の全長は30m以下とされているのだ。

この結果として、宇都宮駅から終点の本田技研北門まで、15kmを44分も要する計画となっている。

早朝などならば、自動車なら20分もかからないのではないだろうか。

将来的には特認を得てもう少しスピードアップする計画のようだが、それにも限度がある。

車両についてはもっと問題だ。

全長30mでも、大型バスの12mよりは大きいが、新幹線車両が1両25m、在来線通勤電車が1両20mであるのと比較すると、大きく見劣りする。

これでは、輸送量に対して運転手を節約できるという鉄道のメリットを活かすのは難しい。

現状、路面電車ではもうからないように法律が設計されているのだ。

公共交通だから赤字でも良いという意見を聞くこともあるが、それは違う。

より正確に言えば、公共交通単体では必ずしも黒字である必要は無いが、もう少し大きい単位ではトータルで利益を生むものでなくてはならないはずだ。

それを検証できないのであれば、公共交通の存在意義を示すためには、結局は単体で利益を生むほか無くなる。

もっと踏み込んで言えば、公共交通を整備することによって企業が立地し、人口が増えるような投資でなければ、成功とはいえない。

というわけで、宇都宮LRTの前途は多難を極めるであろうが、せっかくの試みなのでなんとかうまくいって欲しいと願っている。

是非一度は乗ってみたいものだ。

ところで、それとは別に、宇都宮市の資料にはたいへん気になる記述がある。

軌間を「1,067mm」とし、その理由として「将来的な既存鉄道への乗り入れを考慮し」とあるのだ。

乗り入れを考慮されるような既存鉄道とは何であろうか。

東武宇都宮線だろうか。JR日光線、宇都宮線か。意表を突いて真岡鐵道、あるいはJR烏山線だろうか。

これらはすべて軌間1,067mmであ、その点で可能性は残る。

一方で、LRTの電化システム(直流750V)で電化されている候補はない。

東武とJR日光線、宇都宮線は直流1,500Vであるし、真岡鐵道と烏山線は非電化だ。

おそらく想定しているものはあるのだろうが、そこまではうかがい知れない。

 

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