今般、国がJR北海道に対して支援をすることが報じられた。

ニュースでは、支援と同時に「経営改善に向けた取組を着実に進めるようJR会社法に基づき監督命令を出した」とも報じられている。




しかし、これはJR北海道にとって、かなり厳しい内容ではないだろうか。

民営化以後、苦しい経営を強いられているJR北海道。民営化当初は、特急列車の高速化など積極的な施策も見られたが、近年は事故が頻発したり、いろいろ問題が報じられ、非難を浴びることも多かった。

しかし、JR北海道が基盤とする北海道とはどんな土地なのだろうか。

下の略図を見てほしい。

黒字は主要都市名と人口(万人)、青字は都市間の鉄道距離(鉄道の営業キロ数)だ。

札幌は人口195万を数える大都会だ。日本では東京、横浜、大阪、名古屋に次ぐ人口を誇っている。

しかしそれ以外は寂寥たるものだ。

稚内など、札幌から400km近くも走って、人口わずか4万人である。

根室本線にしても、人口20万人に満たない2都市のために350kmを走らねばならない。

図からは省いたが、かつて漁業で栄えた根室は、釧路からさらに135km先、人口は3万人だ。

これではいかなる努力をしようとも、黒字化は不可能ではないか。

これがどれほど厳しい経営環境であるかは、やはり苦しい経営を強いられている四国と比較するとよくわかる。

JR四国の路線の軸は高松にある。

その高松の人口は42万人で、札幌よりも遙かに劣る。

しかし、高松から各方面に伸びる各方面には、およそ人口30万人以上の都市がそろっている。

しかも、それらの都市に対する距離は短く、保線や運行に関するコストは、北海道より遙かに小さいことが見える。

これで経営が厳しいのだから、北海道で長距離輸送で経営を改善することなど不可能であろう。

JR北海道で経営を改善するために採れる手法は一つ。

札幌近郊の通勤、および千歳空港への輸送のみに専念し、他の路線をすべて放棄することだ。

あとの路線は、やりたい人がいればどうぞやってください、というのが、JR北海道が採るべき方針だろう。

国が、あるいは地方自治体が、鉄路が必要だから存続させたいというのであれば、国や地方自治体が勝手に経営すれば良い。

それをJR北海道に押しつけるのは誤っている。

国の立場で考えてみよう。

国としては、北海道の交通をどうするか、という立場で考えることになる。

別に、鉄道がなくてもよいのではないか。

人口4万人の稚内に向けて、延々何百キロも線路を引いて列車を走らせるのは無駄だ。

加えて稚内には飛行場まである。

鉄道がなくとも、北海道には良い道路がたくさんあるのだから、長距離バスを走らせた方が効率的だ。

経済効率の観点から考えると、そもそも良い道路を建設する必要があるのかという問題もあるが、良い道路さえもなかったとしても、世界的には、バスの方が標準的な長距離の輸送手段ではないだろうか。

逆に、もしも何らかの事情で鉄道を維持したいというのであれば、たとえば稚内の人口を十年以内に人口30万人までアップさせるから、それまで線路を維持してくれ、と要請するのなら筋が通っている。

日本全体の人口さえ維持できない中で、そういう魔術が可能なのかどうかはわからないが、樺太/サハリンと向き合う北の要衝である稚内が人口わずか4万人、同様に北方領土と対峙する根室が人口3万人というのは、何かが間違っているのではないかという気はする。

国としてのそういう施策なしに、人口4万人の町への200kmの鉄路を維持できないが故に責められるのでは、JR北海道としても浮かぶ瀬がなかろう。

 

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