昔から思っていたが、英語も漢字とアルファベットを交ぜ書きにしてくれたら、たとえば。
This is a pen.
はやめて、
此 is a 筆
としたら、読解も楽になるだろう。
しかし、世間の評価としては、この「漢字と仮名を交ぜ書きにするシステム」が日本語を難しくしている、ということのようだ。
そこで今日は、この評価が誤解であり、実はこの「交ぜ書きシステム」が日本語だけでなく、世界のほとんどの言語で採用されていることを説明する。
フランス語、ロシア語、アラビア語等、世界の多くの言語では「表音文字」が採用されている。
表音文字とは、文字が発音を表すものだ。
(表音文字の例)
これは、読めさえすれば綴ることができる、という点で、簡素で便利なシステムである。
表音文字に対するところの、中国の漢字に代表されるものが「表意文字」、すなわち文字が意味を表すものだ。
(代表的な漢字)
漢字は覚えなければいけない文字数が多いから、漢字は言語の習得を阻害する等の説もあるが、これこそ完全な誤解である。
そもそも漢字は、一音節一単語の中国語の特徴に即して生まれた文字で、一文字が一単語に相当するところに特徴がある。
漢字一文字を覚えることは、単語一つの綴りを覚えることと同じなのだ。
漢字は覚えなければいけない文字数が多いから習得が大変だというのなら、英語は覚えなければいけない単語数が多いから習得が大変だということでなくてはおかしいが、そんな説は聞いたこともない。
逆に、たとえ表音文字であるアルファベットを覚えても、それだけで文章は書けない。
単語一つ一つごとに綴りを覚えなくてはいけない。
英語のように、発音と綴りが全然対応していないような言語では、アルファベットを用いることで、かえって覚えにくくなっているとすら言えるのではなかろうか。
漢字は習得が大変だとは思うが、アルファベットを用いるシステムと比べて漢字を用いるシステムが習得が困難だというのは、完全な誤解だ。
とはいえ、たくさんの漢字を覚えるのはやはり苦労する。
これは北海道の地名だが、命名した人は、よくこんな漢字を知っていたものだと感心する。
が一方でwikipediaに紹介されているドイツ語「Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft」(ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合)を覚えることが、漢字を覚えるよりも容易だといえるだろうか。
さて、漢字もアルファベットも、習得の困難さというものはあろうが、これを交ぜ書きしてしまうのが日本語である。
が、じつはほとんどの言語で、漢字に相当する「音を表さない表意文字」を用いている。
それはこれだ。
英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、アラビア語、トルコ語…
世界のほとんどの人は、この表意文字を使っているのではないだろうか。
そして、「1」ならば「one」という読み方に即した綴りがあるにもかかわらず、この記号を使っている。
これは、漢字・仮名交じり文と何ら変わるところがないではないか。
この事実は、表音文字・表意文字の交ぜ書きシステムに、それだけの利点があることを暗に示している。
広く使われる言語のうちで交ぜ書きシステムを使っていなさそうなのは、中国語ぐらいだ。
一方で、このような交ぜ書きシステムを、堂々と大々的に展開したのが日本語だとは言えまいか。
漢字・仮名交じり文を恥じることはない。
世界で最も発達した文字システムとして、堂々と使っていこうではないか。