日露の条約交渉に関連して、北方領土を巡る討論が行われている。

政府の立場は4島返還論だが、日本共産党のように全島返還論を主張する人々もいるし、個人の立場では全島放棄論の人もいるようだし、どのように解決するのかはわからない。




が、ここではとりあえず何らかの形で平和条約が結ばれたものとして、その背後にあるロシアがどんな国なのか、概観してみよう。

まず、ロシアはあくまでヨーロッパの国である。ヨーロッパ部分は面積では1/4に過ぎないが、人口は3/4を占める。とはいえ普通の国と比較すれば、これだけでも破格の広さだ。このためヨーロッパ唯一の仏教国であるカルムイク共和国(連邦内の自治共和国)を含むなど多様性を示している。

アジア部分は鉱物資源の宝庫であるが、人口希薄で、しかも人口が減少している。日本に隣接する極東連邦管区には、日本の16倍の面積に人口わずかに600万人である。

これはロシア鉱業や、それに付属する工業が経済的に成立していないことを示唆している。せっかくの資源が宝の持ち腐れである。

ただ、その鉱工業製品の市場を求めるのなら、中国があれば十分で、日本を求める必然性はないはずだ。ないよりはましだろうが。

そこでロシア側が日本に求めるのは、むしろ資本と技術であろう。衰えたとはいっても日本はまだ中国の半分の経済力を有しており、科学技術の面でも優っている部分がある。

中国と比較した場合、経済を通じた政治的野心に欠ける点も好都合だ。

さて、ロシアと経済的な関係を深めるにあたって、宗谷海峡・間宮海峡にトンネルを掘って鉄道を連結しようという計画がある。

これらの海峡は津軽海峡よりも浅く、技術的には不可能ではないらしい。

ロシアの鉄道は軌道の幅(線路の2本のレールの幅)が新幹線よりもさらに広く(1520mm)、日本の鉄道(同1067mm)とは直通できないが、そこは問題ない。

このさい在来の宗谷本線は廃止して、ロシアの軌間で札幌、あるいは苫小牧まで直通すればいいのだ。

それを利用して旅客列車を運行すれば、いまよりも速く稚内へ着けるだろう。

さて、鉄道を連結しても、人口600万人の極東に対して運ぶ貨物の量は知れているのだから、当然その向こう、主としてヨーロッパを睨むことになる。

船舶より遙かに速く貨物を運搬できるし、また最小ロットも小さくなるので、きわめて便利だ。

それに加えて、船舶ではアクセスできない国々との取引が容易になる点も見逃せない。それも概観してみよう。

まずモンゴルだ。モンゴルは人口わずかに300万人だが、世界屈指のモリブデン埋蔵量を誇る。鉄鋼に添加して性能を調整するための金属だ。

隣接する内モンゴルの概要も合わせて示す。こちらは人口2600万人と、モンゴルを圧倒する。

そもそも清王朝時代までは一体的に清の皇帝に支配されていたのだ。ざっくり言えば清王朝は皇帝の下に中国、満州、モンゴル、回疆、チベットの5ヶ国が治められる、というような体制を取っていた。(厳密に言えばそうではないが、イメージとしてはそんな感じだ)。

地域によって状況は異なるが、そのうち回疆が1884年に内地化されて「新疆省」とされたのを皮切りに、1907年には満州が、革命後の1928年に内モンゴルが、1951年にチベットが内地化、つまり実質的に中国の一部となったとみられる。

だが北方ではロシアの支援があり、モンゴルのうち外モンゴルは独立した。要するに、モンゴルがロシアと中国のそれぞれの勢力圏に分割された形になっている。

次に中央アジア。ここは5ヶ国で人口7千万人を数える。

面積ではカザフスタンが圧倒的だが、人口ではウズベキスタンが半分を占める。サマルカンド、タシュケント、コーカンド、ブハラ、ウルゲンチ、フェルガナなど、歴史的に有名な都市の多くがウズベキスタンに属する。

いずれも資源大国であるが、残念ながらそれが十分に活かされているともいえない。

とはいえ、これら諸国は北に控えるロシアの勢力圏である上に東に中国、南にインドが位置しており、この地でそれらとの市場獲得競争に打って出るためにはロシアとの協力関係は不可欠であろうと思われる。

この地域にはかつてアラル海という巨大な湖があったが、主として綿花のための灌漑が原因で、ほぼ干上がったといわれる。

次にザカフカス。昔はトランスコーカサスと呼ばれた。

バクーの油田は有名だが、どの国も北海道よりも狭く、人口も少なく、見るべき産業が無い。

古くから世界の中心であった中東地域にありながら域内では辺境に位置するこの地域は、幾多の民族が錯綜しつつも争乱の渦の中心をわずかに外れて生き残り、このような独特の小国群を産んできた。

しかしそのような複雑な襞を織りなす歴史的経緯のせいか、いずれも小国であるにもかかわらず世界に知られた人材を輩出している。

ソ連邦の首脳であったジョージア人のスターリンやシェワルナゼ、アルメニア人のミコヤンや、作曲家のハチャトゥリアン(アルメニア人)などだ。

アゼルバイジャン人は、16世紀に建国されたサファヴィー朝ペルシアの主力民族であった。

独特なセンスに期待できる人材輩出国群とみるべきかもしれない。

最後にヨーロッパ。主力産業を見ると、今まで見てきた地域とは打って変わって産業の高度化が認められる。中心ではないとはいえやはりヨーロッパ。

なかでウクライナは悲惨だ。ロシアと米国の間での政治の舵取りに失敗した結果であるが、置かれた政治的位置からいえば、一歩踏み誤れば日本も他人事ではない。

この辺まで来ると海からのアクセスが可能であり、紹介の趣旨から逸れてくる。

さて、ロシアとの関係改善と、あわよくば海峡トンネルの開通により、これらの国々とのパイプが新たに開けるようになる。対応できる人材の準備が必要ではないか。とくに語学の能力を持つ人材の育成が急務であると思われる。

ロシアは第二次世界大戦で条約を破棄して侵入してきた国であって信用できないという声も聞く。

だがそれを言ったら、中国とも、北朝鮮とも、同盟国である米国や韓国とだって、外交上の傷を抱えているではないか。比較的友好関係が深いと思われるタイでさえ、第二次世界大戦では当初は枢軸国側で参戦したはずなのに、いつのまにか連合国側で終戦を迎えていたという、見ようによってはなんとも微妙な挙動を示している。

だがそれを理由に商売を躊躇するであろうか。北朝鮮はなんとも言えないが。。

まだ読んだことは無いが、明の謝肇淛の「五雑組」にも、「倭奴より狡猾なものはない」とうたわれているとか。

それからも判るとおり、そもそも我々日本人は、金のためなら命も惜しまぬ倭寇の子孫である。

もう一度先祖の覇気を取り戻し、金儲けに精を出そうではないか。

 

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