地方の第二次産業についてみてみよう
第二次産業の主力は工業と考えて良いと思うが、経済産業省のサイトを詳しく見てみると、これにも地方色があることがわかる。
たとえば、鹿児島県の製造業の従業員数について市町村別にみてみよう。
絶対数だと見づらいので、ここでは比率で示す。
製造業に従事する者のうち、だいたい50%ぐらいが食料品製造業に従事していることがわかる。
鹿児島市でも50%ぐらいは食料品製造業である。セイカ食品や明石屋、南海堂、月揚庵など、錚々たる企業が脳裏をよぎる。
他方で霧島市や薩摩川内市などは食料品製造業従事者の比率が極端に低いが、これは京セラ、中越パルプ、ソニー、ファナックなどの企業が大きな雇用を生み出しているためであろう。
鹿児島県では霧島市や薩摩川内市などは例外に属する。
しかしこれは全国的な傾向とはいえない。栃木県について同様のデータを見てみよう。
これも青が食料品製造業の従事者であるが、その比率は全県的に、鹿児島県でいうところの霧島市と似ている。
原因はよくわからないが、鹿児島県では食料品製造業の従事者が多いとは言えそうである。
さて、経済産業省のサイトでは、食料品製造業のほかにもいくつかの摘要があるのだが、その中で気になったのが「飲料・たばこ・飼料製造業」である。
鹿児島県といえば、全国に知られた飲料の大産地ではないか。
そこで、こんどはこの摘要の市町村別の出荷額をみてみよう。
1位は志布志市。ついで鹿児島市。ほかは取るに足らない。
この表を作ってみて、よっくすは桁を間違えたかと思った。
念のため宮崎県都城市も併せて掲載したが、都城市といえども志布志、鹿児島の両市には及ばなかった。
銘柄で言えば「白波(枕崎市)」「霧島(都城市)」が二大勢力ではないのか。
加えて都城市には南日本酪農がある。
社名は知らなくとも、製品名「愛のスコール」「高千穂牧場のむヨーグルト」は東京でも一般的に見ることができる。
それが枕崎市は箸にも棒にもかからず、都城市もご覧の通りとはこれいかに。
もう一度、摘要名をよく見てみよう。
「飲料・たばこ・飼料製造業」
飼料製造業…?
志布志には大きな港湾があり、岸壁に飼料会社がひしめいている。
初めてこの風景を目にしたときは、なぜ大隅半島の片隅に高層ビルが?
ここはどこだ?と戸惑ったものだ。
しかしこの摩天楼には窓がほとんどない。倉庫だからだ。
(志布志港遠景。奥の摩天楼軍やガントリクレーンが志布志港。手前のテトラポットは夏井漁港)
志布志市には名の知れた酒造会社もあるが、これほどまでに他の市に差をつけている要因は、やはり飼料会社であろう。
大隅半島では、生暖かい風に乗って畜産のかぐわしい匂いが漂ってくるのが常であるが、志布志の町に襲いかかるのは飼料会社からの魚粉の匂い(たまにトウモロコシの匂い)である。
さて、製造業全体で見てみよう。
飲料・たばこ・飼料製造業の金額が最大だった志布志市では、食料品製造業も合わせると、製造品出荷額の95%を占める。食料品製造業としては、ウナギ加工や畜肉加工などが知られる。
飼料製造が大きいだけに。製造業全体で見ても絶対額も小さくはない。
ご覧の通り、鹿児島市、霧島市に次ぐ県内3位であり、薩摩川内市を上回る。
都城市の製造品出荷額が鹿児島市をも上回るというのも気になる点だが、その点については本稿ではこれ以上追究しない。
さて志布志市に飼料会社が存在するのは、たんに大きな港湾があるからというのみではなく、宮崎県、鹿児島県が畜産・養魚の一大産地であり、大量の飼料を消費するからだ。
志布志港はその窓口であるがゆえに飼料会社が多数立地し、結果として大きな工業生産額を生み出しているというわけである。
そしてその産物が、「食料品製造業」に廻送されて、こちらも一定の金額を生み出すのである。
このように、志布志市は完全に港湾に特化した町となっている。
これも、地域の特色を活かした町作りの一つのモデルであろう。
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さて、後背に大消費地が存在することはこのように大きな経済的なメリットがある。
目線を変えれば、世界最大級の人口を擁する東京の膝元・東京港が、高雄港や釜山港の後塵を拝するのも、何かシステムに問題があるのではないだろうかと思わざるをえないのだ。
志布志市に話を戻せば、たとえば魅力的な飼料を開発できれば、眼前の港から外国に出荷することも可能だろう。
すごく大きなポテンシャルを抱えているのだ。
なんとか活かして、成長していってほしい。