なんとなくではあるが、鹿児島、沖縄といった南国では、強い雨と晴れ間が短時間で繰り返して、雨が長続きしないという印象があった。
これに対して、東京では雨天になると弱い雨が一日中でもしとしと降り続くような印象がある。
この感覚を検証してみよう。
図は、日本各地の主要都市の、6月の日照時間と降水量の関係である。
データは気象庁のWebサイトに掲載されている、過去30年の平年値である。
東京では梅雨のまっただ中であるが、沖縄県などでは既に梅雨の季節は終わっている。
東京は他の諸都市と比較して日照時間が非常に短いことから、曇天の時間が長いことがわかるが、そのわりには降水量も少なめである。
たとえば降水量が同等の新潟や松本と比較して日照時間が短く、したがって降る雨も、少量ずつ、しとしと降っているのではないかと推定される。
ただし日照時間は注意して取り扱うべきであって、夏至を含む6月にもなると、日の出から日没までの時間(本稿ではこれを「昼間時間」と称する)が、地域によってかなり違う。
たとえば本年6月22日に予想されている昼間時間は、稚内では15時間41分もあるのに、東京では14時間36分、石垣島では13時間40分しかない。
概して北極地方に近づけば6月の昼間時間は長くなり、赤道に近づけば短くなる。
東京よりも1日あたり1時間も昼間時間が短い石垣島では、日照時間は逆に東京よりも月間で83時間以上、1日辺りでは2時間45分以上も長く、それでいて降水量は東京都あまり変わらない。
東京と比較すれば、6月の石垣島では強烈な雨が降っているのだろう。
また日照時間は東京と鹿児島、あるいは名瀬(奄美大島)などとの間ではたいして変わらないが、鹿児島や名瀬の降水量は東京よりもはるかに多い。
こちらも東京よりも強烈な雨が降っているはずだ。
年間で見てみよう。
年間で見れば東京の位置づけは、全国的にはかなり平均的となる。
年平均でみれば、東京の雨がとりたてて特徴的だとは言えないのである。
東京だけでなく、大阪も、福岡も、意外なことに那覇や父島も、だいたい似たようなものである。
梅雨も入梅直後と梅雨明け前では降り方が異なるように感じるが、6月の東京は、梅雨前半の特徴が強く表れたのかもしれない。
ただし気になるのは名瀬である。
ご覧の通り、年間で見ると名瀬は、日本各地と比較して極端に日照時間が短いのだ。
6月の名瀬も日照時間が短くはあったが、突出していたわけではなかった。
これはたいへん気になる突き抜け方である。
そこで、名瀬を他の多雨地域、たとえば三重県の尾鷲、鹿児島県の屋久島などと比較してみよう。
年間降水量で比較すると、屋久島や尾鷲はさすがの貫禄だ。
特に尾鷲は、その降水量にもかかわらず日照時間は東京とさほど変わらず、その雨の激しさがうかがわれる。
その強烈さから「尾鷲の雨は下から降る」と称されるが、その名にふさわしい激しさである。
しかしこれらと比較しても、名瀬の日照時間の短さは際立っている。
名瀬で1年のうちで最も日照時間が短いのは2月であり、一年中雲に覆われた土地柄だと言えそうである。
名瀬には及ばないが、屋久島の日照時間も短い。鹿児島県おそるべし。
「屋久島では月に35日雨が降る」というのも、これもまた的を射た表現だったのである。
さて、そうなると屋久島、尾鷲の6月の様子はどうなっているのか、気になるところである。
6月に限れば、尾鷲の雨はもちろん多いが、鹿児島や名瀬と同程度であり、それらよりも日照時間が長いことから、鹿児島や名瀬よりも少し強い雨が降るのかな、という程度である。
尾鷲の場合は、梅雨だけでなく他の季節にもよく雨が降ることが年間降水量の多さの原因のようだ。
しかし屋久島は6月に限定しても横綱級だ。
平年値で1ヶ月800mmに迫る降水量は驚異的である。
さて、以上の通り、6月の東京では、文字通りしとしと雨が長い時間、降っていることが明らかとなった。
そして、激しい雨が降る地点は概して日本南部ではあったが、南国だから激しい雨が大量に降るというものでもないこともわかった
紀伊半島、屋久島、奄美大島といった一部の地点だけが、強烈な雨をシャワーのように浴びて生活が営まれているのだ。
そして、ここに挙げた3地点の間でも、それぞれ降り方には違いがあることがわかった。
名瀬は一年中曇天。
尾鷲では季節に跨がって激しい雨が降っている。
そして屋久島では、梅雨の季節に滝のような雨が降っているのだ。
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最後に、本稿で名前を挙げたした地点の一覧を掲載しよう。