地方自治体とは、各地の住民の公共の利益を守るために存在する。
だが、公共の利益とは何だろうか。
正しいか否かは、何をもって判断すればいいのだろう。
当ブログでは、よく鉄道の話題を採りあげるが、たとえば公営の鉄道やバスの経営は地場の運輸会社の利益と真っ向対立する。
それを気にしすぎては何もできないが、どちらかを無視して良いというものでもない。
思うに、「公共の利益」といった漠然とした目標では、結局事なかれ主義に陥る以外にないのではないだろうか。
ここで、総務省の決算カードから、栃木県の市町村の人口と税収の関係を拾ってみよう。
このように、人口と税収は概ね正比例するように見える。
同様に鹿児島県についても見てみよう。
やはり比例するように見える。
これらのデータから、税収を増やすためには人口を増やすことが必要である、という仮説を立てて、より詳しく関係を見てみよう。
まず、栃木県と鹿児島県のデータを合一して、近似直線を引いてみる。
すると相関係数R2=0.98と、きわめて強い相関があることがわかる。
このラインを100%(期待値)として、各市町村の税収がが期待値よりどのくらい多いか(少ないか)、すなわち「対期待値比」を見てみよう。
赤が栃木県、青が鹿児島県だ。これからわかることは2つ。
1つは、栃木県と鹿児島県の間に格差があることだ。
だがこの点については本稿では詳しくは触れない。別に解析して、後日におしらせしたい。
もう1つは、予想通りというか、人口のわりに多くの税収を得ている市町村は、大きい施設を抱えているということだ。
芳賀町には本田技研、上三川町には日産がある。
鹿児島県のトップ3である東串良町、薩摩川内市、南種子町には、それぞれ石油備蓄基地、原子力発電所、種子島宇宙センターという、その名を知られた施設が存在する。
だが、両県都である宇都宮、鹿児島両市がだいたい100%付近に収まるのを見れば判るとおり、100%からの大きな上振れ、下振れは、結局小さな自治体におけるぶれという範囲にとどまる。
もう一度冒頭のグラフを確認していただきたいが、結局大きな傾向で言えば、人口が多い自治体のほうが税収は多い。
いくら大型施設を抱えていても、人口が多い自治体には敵わないのだ。
先に見たように、鹿児島県は栃木県より税収が少ない傾向が見られたので、鹿児島県に多い離島で不利になるのではないかという点も検証してみよう。
青が離島だ。
確かに離島は人口の割に税収が少ない傾向にはあるが、絶対的な傾向とまではいえない。
奄美市や西之表市は、南さつま市や曽於市より上位に来るのだ。
観光の寄与についても考えさせられる。
全国にその名も轟く日光市の対期待値比は、知名度で大きく劣る下野市や真岡市と同レベルであった。
もちろん、観光による経済波及効果により人口が増える傾向はあるだろうから、無関係とは言えない。
だが、人口は税収との関係がとりわけ大きいのだから、まずは人口を増やすことを政策の目的とすべきではなかろうか。
そのための要素の一つとして、あるいは工場誘致、あるいは観光の活性化であろう。
何にいくら投資すべきか、誰を支援して誰に我慢してもらうかというものは、冒頭に書いたとおり、正解を判定するのが難しい。
ここはひとつ、「人口増」を政策の目標として、その政策の成功・失敗を「どれだけ人口が増えたか」で判断するというのも手ではなかろうか。
「公共の利益」というような漠然とした目標よりは、結果をシャープに判定できるこうした指標のほうが、個人的には好みである。
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