地方では赤字ローカル線の処遇が問題になる一方で、都市では災害のたびに冗長性が不足した現代の鉄道のもろさを露呈するとともに、唯一無比の大量輸送システムとしての鉄道の重要性を再認識させられる。




日本の人口は減少局面を迎えているが、地方と比べて都市の人口減少は緩やかであり、相対的な都市への人口の集中は続いている。

ただし日本では市と町村の区別が曖昧になっており、市であることは必ずしも人口とインフラが集中した区域を意味していない。

ここで人口10万人という基準を設けてみよう。

人口10万人を越える都市は、国内にどのように分布しているのだろうか。

参考までに、人口10万人の予備軍ともいえる人口8~10万人の都市も、あわせて青で示した。

地方では、人口10万人を超えるような都市はだいたい地域で重要な地位を占めている。

山梨県、高知県、和歌山県、徳島県といった、人口10万人を越える都市が1つしかないような県はなおさらだ。

その一方で、三大都市圏には10万都市の著しい集中が認められ、福岡周辺にも若干の都市の集積が認められる。

経済発展の基本は集約化による効率の向上である。

より多くの人が同じ財を使用するようになれば、その財の生産費は安くなり、その財の価格は安くなって、より売れる

ロードサイド型の店舗が駅前の商店街を圧倒するのも同じ原理であって、要するに自動車によって、より広い商圏から多くの人を集めることができるからだ。

日本の成功は世界有数の大都市圏である東京、大阪、名古屋に依存しており、それらの大都市における密住は鉄道による大量輸送システムによって支えられている。

ここでは、都市圏の人口密度を上げることによって、効率を上げているのだ。

結果、商売をするにも多くの人が集まるし、工場を建てれば労働者が大量に存在する。

都市への集約化は決して悪いことではなく、むしろ必要なことである。

地方で、上に挙げたような「密住」もしくは「都市圏の拡大」をどのようにして実現していくのかが今の日本の課題である。

人口が増えれば最も良いのだが、それがかなわないのであれば、今いる人をどうやってかき集めるかを考えなくてはならない。

上に挙げたような10万都市のほとんどは、日本の誇る鉄道網の恩恵に浴している。

しかし、一部そうでない、鉄道網から外れてしまった都市も存在する。

そして、人口密集による、自動車交通の問題点は明らかなのだから、ここでたとえば「人口10万人以上の都市は、国費で地域の中心となる大都市(たとえば県庁所在地)への鉄道を敷設してあげる」というインセンティヴを与えてみたらどうだろう。

人口8万人の真岡市は、人口2万人の益子町と合併すればこの特典に浴する。

宇都宮への鉄道を敷いてもらえるのだ。

同様に、「人口30万人以上の都市は、国費で大都市への鉄道を複線で敷設してあげる」としてみよう。

人口30万人以上の都市は、どのように分布するのだろうか。

見ての通り、これも3大都市圏への集中が明らかである。

一方で北海道などは、広い道土にわずか2箇所(札幌と旭川)のみである。

そのような中、たとえば人口24万人の松本市は、人口10万人の安曇野市と合併すればこの恩典に浴し、長野、東京のいずれかへの路線を全線複線化してもらえるであろう。

もちろん、合併による小手先の人口増加よりは、自然増や、産業の育成による社会増による基準値の突破のほうが、より望ましい。

しかしそうはいっても、市町村合併でも、中心市街地の集約化という効果は期待できるから、やらないよりはましだ。

そして、鉄道の導入は集約化による交通問題をある程度解決してくれるので、集約化を促すインセンティブとして鉄道を挙げるのは、一石二鳥ではないだろうか。

さて、人口8万人以上の都市の分布を再度見てみよう。

この中で、特別に問題があるのは沖縄県の那覇を中心とする都市群である。

那覇市(32万人)を中心に浦添市(11万人)、宜野湾市(10万人)、沖縄市(14万人)、うるま市(12万人)、その他糸満市、豊見城市などの衛星都市を従えて、南北40余kmの一帯の人口は120万人を越える、日本を代表する大都市となっている。

しかし、この那覇都市圏には、モノレール以外の鉄道が存在しないのである。

これは大問題ではないだろうか。

まずは那覇市からうるま市までの鉄道敷設をなんとか進めることができないものか、よっくすは提案するものである。

そのためには、その間に介在する多数の軍用基地が障害となる一方、活用すれば恰好の鉄道用地となる。

基地の集約化や訓練地の他県への移転等によって、沖縄米軍の戦力を維持しつつ敷地の一部を鉄道用地に転用する方法がないものか、米軍や国に対して働きかけてもよいのかと思う。

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