昭和39年の新幹線開業を皮切りに、高速鉄道の整備が進んだ。

東京直結の北陸新幹線はすでに金沢まで開業しており、福井への延伸が秒読みとなっている。

山形、秋田には新幹線直通特急、いわゆるミニ新幹線が運行されている。

これによって山形、秋田の両都市から鉄道による東京への旅行が容易になり、また所要時間が短縮された。

この他山陰の鳥取・松江は陰陽連絡線、四国は瀬戸大橋と関連各線の高速化により、東京や大阪等の大都市へ行くために鉄道を利用することが容易になっている。

このように、主要都市への高速鉄道網が整備されるなか、ひとり取り残された感があるのが宮崎市である。




宮崎市は人口40万人。秋田市の31万人、山形市の25万人を大きくしのいでいる。

フル規格新幹線は無理でも、ミニ新幹線は検討されても良いのではないだろうか。

既に延岡~宮崎空港間の日豊本線高速化は完了している。

しかしこれは、延岡市からの宮崎空港利用の便を考慮したものであって、他の高速鉄道網からは孤立した状態にある。

まして人口16万人の都城市は、日豊線高速化からも完全に取り残されているのだ。

 

さて一般的にイメージされる宮崎への交通路は、小倉~大分~宮崎という、九州東海岸沿いのルートだろう。

かつては東京発、大阪発の寝台特急がこのルートを通っており、新婚旅行の定番として人気があった。

しかし、現在は博多から鹿児島市まで九州新幹線が開通しており、これを活用する方が得策だ。

特に、宮崎の場合は東京・大阪への旅客はそのほとんどが飛行機利用であり、たとえ鉄道が高速化してもそれは変わらない。

鉄道のターゲットは宮崎~博多間の旅客だ。

博多~宮崎であれば、その鉄道距離は小倉・大分回りの407.1kmに対して熊本・人吉経由なら331.2kmと、こちらの方が近いのである。

現に、新八代で新幹線に接続する高速バス 「B&Sみやざき」が運行されており、交通関係者もこのルートをメインとして位置付けていることがわかる。

そこで、ミニ新幹線としての宮崎新幹線を検討するならば、第一の候補はこのルート、すなわち新八代で分岐して人吉、都城を経由して宮崎に至るルートだということになる。

すると、現在鹿児島~宮崎間で運行されている特急「きりしま」号はどうなるのだろうか。

心配はいらない。

ここには軌間可変電車(フリーゲージトレイン)を就役させればいいのだ。

長崎新幹線の運行列車として期待がかかった軌間可変電車であるが、実用化が間に合わず、長崎新幹線ではすでに放棄された。

しかし特急きりしま号であれば新幹線よりも最高速度は低く、技術的ハードルも低いのではないだろうか。

実験的に営業列車として運行することで、技術的経験を蓄積することもできる。

別の問題もある。

九州新幹線から、鹿児島中央駅で特急きりしま号を乗り継ぐルートの存在だ。

地図を見れば一目瞭然だが、八代市~都城市と比較して鹿児島市~都城市のほうが整備する必要がある区間が短いのだ。

そのうえ、新八代~鹿児島中央間は新幹線で高速運転できるのだから、このルートと比較して人吉経由にどの程度の優位性があるのかは気になる。

そこでこの点を検討してみよう。

まず人吉経由と鹿児島経由の具体的な距離は図の通りだ。

これを、新幹線は平均160km/h、ミニ新幹線は平均80km/hで走るものとする。

実際に、ミニ新幹線として営業している秋田新幹線、山形新幹線の平均の速度は70~80km/hだ。

また九州新幹線は概ね160km/hで走っている。

もっとも、停車駅が少ない速達タイプだと、さらに速くはなる。

しかしとりあえず新幹線は平均160km/h、ミニ新幹線は平均80km/hとして、人吉経由と鹿児島経由の博多~宮崎間を比較しよう。

すると、人吉経由では331km、200分。一方で鹿児島経由では383km、191分だ。

ミニ新幹線を整備するとしても鹿児島経由のほうが所要時間は短いのだ。新幹線おそるべし。

とはいえ、人吉~吉松間は現在35kmであるが、これはループ線やスイッチバックを含んだ距離であり、国道や高速道路と同様にトンネルを穿って、吉松駅ではなくえびの駅やえびの上江駅に接続すればもっと短くなる。人吉駅とえびの駅は、直線では20kmの距離なのだ。

もし10km短縮されれば、想定所要時間では8分短縮され、鹿児島経由と比較して遜色なくなる。

また新幹線と在来線を鹿児島中央駅で直通させるのは構造的に不可能だが、新八代駅なら期待が持てる。

鹿児島経由では距離が長くなる分だけ運賃も高くなるし、将来の線形改良による所要時間の短縮も多くは期待できないのだから、ここは人吉経由に期待したいところである。

さてそれでは、博多~宮崎間200分というのは、現在の鉄道と比較してどの程度の短縮になるのだろうか。

ここに人吉経由、鹿児島経由、それに大分経由の、それぞれの現在の所要時間を比較した。

見ての通り、現在の鉄道網でも最速の鹿児島経由ならば223分しかかからないので、それと比較すればたった23分の短縮にすぎない。

正直、23分の短縮のためにミニ新幹線の建設というのは、少々無理がある。

しかしすでに述べたように線形改良による所要時間短縮の余地はかなりあり、博多~宮崎で3時間を切ることも可能であろう。

繰り返すが、宮崎市は人口40万人。

博多~宮崎では、飛行機の便が1日あたり10便以上もあり、高速輸送に対する需要はあるのだ。

期待したい。

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