中華人民共和国(PRC)のGDPが日本を追い越してから何年が経つだろうか。

かつてはPRCを人口だけの国だとか、低価格低品質等々低い評価を下す人も多かったが、いまや日本が到底太刀打ちできない相手になったことを認めざるをえない。

精密機械など、かつての日本の得意分野ですっかりお株を奪われる形になり、余計にみじめである。




さて、経済力を元手に世界に攻勢をかけるPRCだが、現在でも中国共産党による一党独裁体制をとっており、自由の抑圧や民族的弾圧が伝えられるなど、特にその政治的な問題が強調されることも多い。

だが、政治的に抑圧されているから中国人は不幸だとか、弾圧されているからチベット人やウイグル人は不幸だと単純に考えることはできない。

たとえ自由になっても、独立国になっても、結果病気になっても医者にもかかれず、その日の食糧に困って餓死してしまったら何もならない。

だからチベットの独立を考える人がいたとして、独立の結果チベット人の製品が世界市場を席巻し、うまいものを食って長生きができるような未来のためであればよいが、元のように高原でのどかな遊牧生活を送ってもらおうという思いであれば、考え直したほうがいいかもしれない。

それにそもそもPRCのリスクが認識されて企業が逃避したり、経済政策に失敗して革命が起きたりしたからといって、それで日本の繁栄が回復したり、日本が成長したりするわけではない。

PRCに代わる新興国が現れて、そこに日本が負けるというだけのことだ。

日本がもう一度豊かな国になるためには、やはり日本自身が実力をつけるしかない。

がんばれニッポン。

そして中国に追い付け追い越せ。


さて、そうはいっても中国の政治体制は一党独裁であり、我々が受けた従来の教育によれば、自由主義体制と比較すれば硬直的で劣るものであったはずである。

その真偽をここで検討しないが、日本が強みを発揮するべきは、まずこの点ではないか。

つまり日本は自由主義社会なので、何を考えて何を言うこともできるし、ルールに従えば何でもできるのだ。

上意下達で一糸乱れぬ独裁制と比較すると、「考える頭脳」の数が圧倒的に多い。

だからイノベーション(技術革新)の速度が速く、結果として技術力で他国に勝って豊かになっていくという、そういうシステムであるはずだ。

逆に言えば、いくら自由主義体制をとる日本であっても、会社組織や社会の組織が個人の能力を活かす体制になっていなければ、その体制はPRCとさほど変わらない。

それでは人口で優るPRCに勝つことはできない。


もう少し具体的に考えよう。

リーダーと部下がいるとする。

そして部下がアイデアを出して、リーダーが良し悪しを判定するものとする。

この場合、リーダーが決定権を握っている限り、いくら部下が優秀なアイデアを出しても、仕事の質はリーダーの能力のレベルまで落ちる。

逆に部下が阿呆であれば、そもそも優秀なアイデアが出ない。

要するに、こういうシステムのもとでは、仕事の質は、リーダーと部下のうち、レベルが低いほうに合ったものになる。

これではPRCに勝つのは難しいのではないだろうか。


近頃気になるのは、「オールジャパン」「ワンチーム」といった、団結を促すキャッチコピーである。

これらは、多くの才能を1つのチームに結集させ、情報の交流によって相乗効果を期待するものであるから、個々が才能を発揮できる条件のもとでないと意味がない。

しかし現実には「オールジャパン」「ワンチーム」といったフレーズは、しばしば異論を封殺するために使われる。

「きみの言いたいことはわかるが、チームの目標はこれだから、まずはこの方向でがんばってくれ」

などというのがそれである。

リーダーから見れば、優秀な才能たちが大車輪のように働いているように見えるかもしれないが、要するにリーダーのやりたい仕事が高速化されるだけで、結局は1人で考えているのと同じである。

だからといって個々人が穴熊のように小さなセクトに立てこもって勝手なことをやっている組織というのはより問題が深刻だ。

それでは個人の才能は発揮を結集して大きな力にすることもできないし、そもそも個人の才能を活かすだけの資本が集積されないから、結局才能は埋没していく。

PRCは事故に遭った高速列車を土に埋めたかもしれないが、日本は優秀な才能を集めて組織に埋めるのだ。

こうした両国が戦ってどちらが勝つかを予想するのは難しいが、日本の勝利が確実だと断定するのは躊躇する。

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結局のところ、中国がこけても、日本は勝てない。

たとえ中国で政権が倒れて、内戦にでもなって、経済がめちゃくちゃなことになったとしても、日本の繁栄は決して戻ってこない。

日本自身の実力を高めてこそ、初めて世界で競争できるのだ。

 

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