国内総生産。GDP。

国内で生み出された付加価値の総額だ。

国の経済力の指標として最も頻繁に用いられる。




その県版ともいえる、県内総生産というものが内閣府から公表されている。

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/kenmin/kenmin_top.html

突出して大きいのが東京都だ。

2015年時点で日本全体のGDPが550兆円弱で

日本における県内総生産。面積がGDPの大きさを示す

あるのに対し、東京都は104兆円で約2割を占める。

2位の愛知県(39兆円)、3位の大阪府(39兆円)を大きく引き離している。

納得感のある数字だ。

日本国民が肌で感じているところであろう。

九州など、8県の総額で50兆円と東京都の半分であり、そのうち4割を福岡県が占める。

北海道で各振興局の管轄地域別にみると、予想通り石狩管内が突出している。

北海道における域内総生産。面積がGDPの大きさを示す

しかし、仔細に分析するとやや違った像が見えてくる。

1人当たりGDPという考え方がある。

ここではGDP/pと表記する。

GDPを人口で割ったものであり、国民一人一人が実感できる豊かさにより近い。

この指標でいけば、日本はまだ中華人民共和国(PRC)を上回っている。と思う。

2015年の日本の人口は1.27億人なので、GDP/pはおよそ420万円となる。

意外とさみしい。

ソフトバンクの社長だとか楽天の社長だとかを含んだうえでのこの数字だから、私たちが真に生み出している価値は、じつはかなり少ないのだ。

さて、各県の人口は公表されているから、県ごとのGDP/pを計算することができる。

赤が全国平均を上回る県、青は下回る県だ。

1人あたりGDP(GDP/p)が全国平均を上回る県を赤で、下回る県を青で示した

富山、広島、山口といった県の健闘が光るが、全国的に見ると、地方では人口のわりに生み出す価値が少ないと言えそうだ。

また神奈川、千葉、埼玉といった東京周辺の各県では、全国平均を大きく下回っている。

しかし、これら東京近郊の各県が貧しいという実感は無いから、これらの県は各県の実力で自立しているわけではなく、あくまで東京の一部として機能しているのかなと思わせる。

人口の移動という視点で見ると、青い県から赤い県に向けて引力が働いていると考えることができる。

本当にそう言えるか。

ここで、2015年のGDP/pと、2010年から2015年までの5年間の人口増加率をブロットしてみよう。

各県の一人あたりGDP(GDP/p)と人口増加率(2010年を100とした場合の2015年の人口)

雑然としてわかりにくいが、なんとなくGDP/pが高いほうが人口増加率が高いように思える。

しかし、先に述べたように東京は周辺各県を含めて一体として扱ったほうが適当ではないかと思うので、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県を合算して再度計算してみよう。

さっきよりすっきりしたように見える。

そしていっそうGDP/pが高いほうが人口増加率が高いように思えるし、実際に統計的に有意な相関が得られる。

そう、GDP/pが低ければ低いほど、人口は大きく減少するのだ。

そして、減った人口はGDP/pが高い地域に吸引されていく。

各県の一人あたりGDP(GDP/p)と人口増加率(2010年を100とした場合の2015年の人口)。なお東京周辺の一都三県はまとめて1県とみなした。

いくつか飛び値のようなものが気になる。

まず奈良県はGDP/pが低いわりに人口減少はわずかであり、神奈川県などと同様の仕組みで、大阪府の一部として人口を維持していることがうかがえる。

実際に大阪近郊も東京圏と同様に処理すると、この飛び値は消える。

また人口増加率が最も高い沖縄県はGDP/pでは奈良県につぐ低さとなっているがこれは何らかの資金で人口が維持されていることを示唆している。

しかし資金源が観光ならばGDPに反映されると思う。

おそらく基地の補償の意味合いがある補助金等の資金であろう。

GDP/pがさほど低くないのに人口増加率が最低レベルである福島県は、この5年間の間に原発事故を経験しており、その影響があるのではないか。

よっくすはたびたび福島県に行くが、そのつど早く復興してほしいと思う。

ちなみに人口増加率が福島県をも下回っているのは秋田県である。

これらの飛び値を例外とみれば、これほど過疎化が進んだ現在であっても、青字で示された各県はまだその経済的な実力に対して人口過剰だと言えるのであって、都会の吸収力に抗しきれない形での人口減少はこの先も続くことが予見できる。

ここまでのことは、受け入れがたい現実ではあるが、比較的考えやすい。

しかし見過ごせないのは愛知県である。

じつは東京圏を1都3県としてまとめてしまうと、愛知県は東京圏をかわしてGDP/pで首位に躍り出るのだ。

三重県、岐阜県と合わせれば多少変わってくるのだが、それでもGDP/p(全国平均比)は116.3、人口増加率(2010-2015)は99.9となり、東京圏と2強の状況には変わりない。

大阪圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県)の合計ではGDP/p(全国平均比)が96.3、人口増加率(2010-2015)が99.2であり、実力の差は明らかである。

これはゆゆしきことだ。

言うまでもなく、愛知県の産業の主力はトヨタ自動車である。

その愛知県が大阪圏を追い越して東京圏に迫っているということは、日本全体が自動車産業のみの1本脚打法になりつつあることを暗示している。

その一方で、電気自動車が脚光を浴びる今、自動車産業にどれほどの未来があるのかは不透明である。

自動車じたいが消滅することは無いだろうが、現在の産業構造は早晩維持できなくなるだろう。

その時が日本のタイムリミットなのであって、それまでに日本の屋台骨を支える次代の産業が育っていなければ、町に失業者があふれる世が到来せざるをえない。

 

思えば、日本は世界最大級の人口を擁する大都市・東京を抱えている

いきなり国外市場に打って出る前に、まずは国内で勝負できるというのは、それだけで有利なはずなのだ。

しかし、現状はその有利さを活かせているとはいえない。

それに対する処方はいろいろと世間で提案されているが、とにかく時間がない。

今のシステムはすべてが時代に遅れており、すべての人はこれから現状の生活を維持することはできない。

いくらでもチャレンジができて、失敗しても再起できて、個人の創意を活かされる地域、それが1箇所でも出現して、中国における深圳のような役割を果たしてくれれば潮流は変わるのだが。

 

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