長崎新幹線が議論になっている




長崎まで新幹線を建設して博多から列車を走らせるというところまでは決まっている。

そのルートを巡って紛糾している。

現在の長崎県方面の鉄道は図のようになっている。

赤は新幹線だ。

博多から鹿児島まで運行している。

長崎県方面には、博多から長崎へ特急かもめ号が、佐世保へ特急みどり号が運行されている。

双方が通過する佐賀では、1時間に2~3本の博多ゆき特急を利用することができ、40分ほどで博多に行くことができる。

ここに新幹線が建設される。

 

武雄市(武雄温泉駅)から長崎までは、おおよそ図のようなルートで建設されることが決まっている。

問題は鳥栖から武雄温泉までだ。

当初の計画では、ここは改良せず、軌間可変列車(フリーゲージトレイン)を走らせることになっていた。

新幹線は軌間1,453 mm、在来線は1,067 mmだから、列車をそのまま直通させることはできないが、列車の軌間を可変にすることによって直通を可能としようとする考えだ。

そうすれば、佐賀県内の新線建設は最小限になるから、佐賀県の費用負担も最小限に抑えられる。

佐世保ゆきの特急みどり号もこれまで通り運行することができる。

それでも佐賀県に負担は生じるが、そこは佐賀県が男気を見せ、また特急が停車していた鹿島市には別途対策を講じることで妥結した。

まあ佐賀県にも新幹線開業で利便性が向上する地域はあるし、妥当なところだろう。

 

ところが、肝心の軌間可変列車が実現しなかった。

軌間可変列車自体は海外に例がある。

しかしこの場合、海外の例と比較して軌間が狭く、機器を搭載できるスペースが小さい。

また時速250 kmを超える高速運行に耐える機械は新たに開発する必要があり、またそうした機器を搭載するために重量が大きい列車を現在の軌道が支えることが不可能であったこと、などが報道から聞こえてくる。

いずれにせよ、軌道可変列車がない以上は次善の策を打たねばならない。

武雄~長崎だけが開通しても時間短縮はそれほどでもなく、むしろ武雄温泉駅での乗り換えが新たに生じるのはサービスダウンとすらいえる。

暫定的にはそれも仕方ないが、一刻も早く博多直通列車を運行しなければならない。

そこで出されたのが、全線フル規格新幹線という案である。

長崎までの時短効果を考えれば、もちろんこれがベストだ。

だが佐賀にとっては納得できるはずがない。

佐賀~博多に限ってみれば、新幹線ができても短縮される時間は10~20分といったところだろう。

そして運賃が高くなるかもしれない。

佐賀にとって新幹線はまったく無用の長物なのだ。

当初は佐賀市の北方を迂回する案もあったようだが、さすがにそこまで佐賀を馬鹿にした案は、今は無い。

フル規格新幹線だとしても、少なくとも佐賀駅を通ることは必須だろう。

だがそれでも、佐賀市にとってはわずかな時短と引き換えに特急料金の実質値上げ、そして莫大な建設費負担を押し付けられるのだ。

加えて、現在は佐世保発の特急みどり号と長崎発の特急かもめ号を合わせて毎時2~3本の博多ゆき特急が同一ホームから発車するのに、新幹線が開通すれば、みどり号は在来線ホームから、かもめ号は新幹線ホームから発車することになる。

佐賀市では新幹線開業によって、むしろ不便になるのだ。

佐賀県としては、たとえ国なり長崎県なりが建設費を全額負担してくれたってご免こうむりたいというのが偽らざるところだろう。

佐賀県を納得するためには、佐賀県に提供するメリットをさらに上積みすることが必要なのだ。

では、全線フル規格は変えられないとしても、他にもっと佐賀県にメリットを追加してはどうか。

たとえば、長崎ゆきだけでなく、佐世保ゆきも新幹線にし、鹿島ゆきも新幹線にするのだ。

特に佐世保市は人口24万人を抱える工業都市であり、人口だけでみれば佐賀市(23万人)よりも多いのである。

そして現に佐世保ゆきの特急みどり号が1時間に1本も走っているのだ。

長崎に新幹線が開通するのなら、多少の無理はあるが、佐世保に新幹線が通ってもおかしくない。

同時に、これによって佐賀県内の有田、伊万里といった地域からも新幹線を利用しやすくなる。

まあ武雄温泉まで自動車で来てもらっても大した距離でもないのだが。

これに加えて人口3万人の鹿島市にも新幹線が開通すれば、少なくとも現在特急が運行される佐賀県内の都市は、対博多という点では、多少の値上げはあっても、そんなに利便性が落ちることは無いし、鹿島~長崎の特急利用による往来は、量的には目をつぶるのもやむ得ない程度であろう。

佐世保および鹿島への延伸を国と長崎県の負担でやってくれるなら、佐賀県としても一考の余地はあろう。

だがこの案には大きな問題がある。

新幹線は佐世保線、あるいは佐賀~鹿島の通学需要にはまったく対応できないし、だからといって新幹線を建設しつつ並行在来線を残せば、あきらかに過剰設備だ。

よっくすは個人的には、そういう区間の地域輸送は廃止したほうがいいと考えているが、現実問題としてはそうもいかないだろう。

だから、さらにこの案を修正し、下図のように赤い点線の部分を現在の狭軌(軌間1,067 mm)から新幹線と同じ標準軌(1,453mm)に改軌してはどうか。

そう、ミニ新幹線だ。

そうすることによって、佐世保ゆきの特急みどり号も、武雄温泉までは新幹線となり、一定の時間短縮が期待できる。

そして武雄温泉~佐世保はたった35 kmの距離なのだから、原則として在来線の路盤を利用しても問題ないだろう。

それよりも、この機会に早岐駅での方向転換を解消できれば、そのほうが時間短縮には寄与すると考えられる。

鹿島ゆきの特急を設定することもできるし、博多から佐賀までは長崎ゆきに併結もできる。

なによりも、この案では佐世保市を中心とする長崎県が大きなメリットを享受するのだから、それだけの負担をする名目になる。

つまり、佐賀県の負担分を長崎県が肩代わりしても、これならば筋が通っており、自県民を説得できる。

佐賀県は、運賃の値上げにはなっても、いちおうは関係の地域すべてに時短効果が波及するので、その工事を国と長崎県が負担してくれるのであれば、なんとか納得は可能だろう。

 

荒唐無稽な案だとは思うが、現状は佐賀県としては、取り返しのつかない鉄道網の改悪を自らの負担で実施するように強要されているも同然なのだ。

そうした佐賀県に納得してもらうためには、このぐらいのメリットを差し出すことは必要なのではないか。

そして同じような誠意が、リニア中央新幹線による水問題で揺れる静岡県に対しても必要なのではないかとも思うのである。

 

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