デュアル・モード・ヴィークルというものがある。

DMVと略される。以下DMVとする。




ざっくり言ってしまえば、線路と道路とを両方走ることができるシステムだ。

バスが線路を走るのをイメージしてもらえばいい。

現在は、徳島県・高知県の阿佐海岸鉄道で、日本で唯一のDMVが運行されている。

2021年12月25日に営業運転を開始し、もうすぐ1か月になる。

以前は北海道で試験されていたはずだが、そちらはすでに撤退している。


さて、徳島・高知県境で走るDMVが営業的に軌道に乗るかといえば、それはまず無理だろう。

DMVが無理なのではなく、鉄道であってもバスであっても、現在の社会情勢と技術では、このような過疎地域で公共交通を維持するのが無理なのだ。

では赤字に輪をかけるようなDMVは廃止したほうがいいのだろうか。

あるいは、自前で設備を維持するのをやめて、阿佐海南駅からバスを運行することにしてコストを縮減すべきであろうか。

よっくすはそうは思わない。

本来、DMVが威力を発揮するのは、このような始発から終点までが過疎地域というような土地ではないはずだ。

郊外から多数のバスが駅前に集まってくるような地方都市こそが、このようなDMVに最も適しているのではないか。

たとえば宇都宮だ。

宇都宮は関東平野に円状に都市が広がっている。

駅前から走れば走るほど市街地が拡散している。

日光街道や陸羽街道のような幹線道路があるけれども、どこか数本の街道に沿って町が発展しているわけではないので、バスの行き先もまた多岐に亘っている。

そして、それら1つ1つの路線には、鉄道を敷設するほどの輸送量はない。

しかし、これら郊外の町や集落からのバスはすべて宇都宮駅、あるいは東武前に集積してくるので、中心市街地ではひっきりなしにバスが行き交うことになる。

ここだけでも鉄道になれば、どれほど効率化できることか。

しかも速度が遅く、進路が直線的でないバスが道路から消えれば、一般の自動車ももっとスムーズに流れるだろう。

では、郊外まで鉄道を建設して、そこからバスにしたらどうか。

いま宇都宮市ではそのような計画が進んでいて、もうすぐLRTが開業することになっている。

しかし乗り換えはそれ自体が不便なうえに割高でもあって、遠方の住人はやっぱり、それであればいっそ市街地まで自動車で行ったほうが良いのではないかと思うだろう。

ここにDMVが走ればどうか。東部の各地、たとえば真岡、益子、茂木などから集まるバスがLRTの軌道を走れれば、交通渋滞をかわして宇都宮駅に達することができるのだ。

行き先が多岐にわたっても、都心に近づけばみな同じ道路を走ってくるのだから、そこだけ鉄道にできるのならそれは大きな進歩だ。

そのような可能性を開くためにも、阿佐海岸鉄道のDMVには大いに期待したいところだ。

実際に営業運転をすることによって問題点を洗い出し、より大きな町での適用に道を開いてほしい。

そしてその暁には、パイオニアである阿佐海岸鉄道にも一定のロイヤリティが入ってほしいものだ。

 

さて、その先の話だが、DMVにはぜひ連結運転に挑戦してほしい。

宇都宮市の例でいえば、各地から集まってきたバスが2、3両ずつ連結して走ってくれれば、運転手の節約になるのだ。

DMVにはそんな可能性も開けているのである。

 

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