かつて国鉄では主要駅から地方交通線に直通する列車が多く見られたけれども、現在は線区ごとにこま切れに運転されるのが通例である。

無理もない。

日本屈指の観光地である伊豆ですら、東京直通の踊り子号は大きく便数を減らしているのである。




しかし地方から見れば、東京ゆきの列車にはやはり夢がある。

烏山駅で列車を待つお客さんがたとえ宇都宮までしか乗車しなかったとしても、方向幕に東京行きと表示されていることにより、行こうと思えば東京に行けるんだということを改めて印象づけられる。

日頃は通学でしか利用しなくても、いつか時間ができたら東京に行こうと思うのである。

一方で、東京で烏山ゆきの電車が走ればどうだろうか。

行ったことがなくても、烏山なる地名はホームで列車を待つ乗客の脳裏に刷り込まれる。

それが見慣れない車輛であればなおさらだ。

何よりの宣伝ではないか。

特急列車よりも各駅停車がいい。

そうすれば、すべての駅の時刻表に、その名が刻まれるからだ。

地方直通の列車が無くなったのは、それが乗客の流れともマッチしていないし、地区ごとに適した車両形式も車輛数も異なるために、いわば運用を見直して最適化した結果である。

しかし、JRにとってはそうでも、地方にとってはかならずしもそうではない。

幸い、上野東京ラインの開通によって、上野駅の頭端式ホームが遊休化しかけているだろう。

ここはひとつ、地元でなんとか運行費を捻出して、JRに委託するという形ででも、1日に1往復ぐらいは「上野行き」を走らせてみてはどうだろうか。

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鉄道は自動車と比べて利用の際の待ち時間が長すぎる。

自動車ならば思い立ったらすぐ乗れるし、準備が滞っても出発を遅らせることもできる。

対して鉄道は、大きな需要があれば、数分に1本が発車するような形で不利な点をカバーできるから、都会では大きな威力を発揮する。

しかしそれほどの需要が無い地方では、どうしても使えない存在である。

鉄道はプライバシーの点でも自動車に劣る。

自家用車なら、喫煙者は思う存分煙をくゆらすことができるのだ。

とはいっても、自分で運転しなくてもいいというのは、鉄道の何よりのメリットである。

特に長距離の移動の際にはそうだ。

鉄道のメリットは環境性能でも定時性でもなく、この1点だろうとよっくすは思う。

だから、そうした観点から、弱点を補い長所を活かすような新しい交通機関が表れてほしいと思うし、それまでの間、利点を活かした活用法をもっと考えてもいいのかなと思っている。

 

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