地方では過疎化が叫ばれて久しい。
南伊豆町でも、ご多分に漏れず、過疎化が進行している。
では過疎化とは、どのような構造で進んでいるのだろうか。
(南伊豆町のサイトより)
表は、南伊豆の各地区の、平成24年と平成29年の人口である。全ての地区で減っているが、よく見ると減少率には地区により差がある。
(南伊豆町のサイトより)
このように、人口の多い竹麻、南中地区では比較的減少率が小さく、人口が小さい南崎、三坂、三浜の各地区で減少率が大きいことがわかる。
ちなみに、各地区の位置関係はこのようになっている。
ほとんどの人が下田方面からアクセスすることになるが、まず入り口にあるのが竹麻地区、そして役場のある南中地区に至る。この両地区が、人口が比較的多く、減少率も比較的少ないことがわかる。
周辺の地区から立ち枯れていることが見て取れる。
上図を再掲するので、見てほしい。
(南伊豆町のサイトより)
世帯数の減少率を一緒に載せたが、よく見ると世帯数が比較的減っていないのに、人口は大きく減っていることがわかる。
人口の減少は、世帯がまるごと引っ越していくのではなく、世帯としては残りつつ、その一部が抜き取られるように減っているのだ。
ある者は高校を卒業して出て行くのだろうし、ある者は家族に看取られて亡くなるのだろう。
結果として高齢の独身世帯が増加していくと考えられる。それは再生産されることなく、やがては世帯数自体の減少に向かうのだろう。事実、すでに減少傾向を示している。
竹麻、南中地区で人口減少の速度が緩いのは仕事があるからだ。
竹麻、南中地区は下田市に近くて通勤に有利という条件も考えられるが、他の地区からでも下田市への通勤は十分に可能だ。
だが、南伊豆の企業の多くは地元相手の零細な商売だから、竹麻・南中の両地区も、周辺の衰えとともに、いずれは運命をともにすることは目に見えている。
まるで日本の縮図を見ているようではないか。
現状の5年で10%の人口減少というのも恐ろしい速度だが、こうして明るみに出た構造を踏まえれば、今後は一段と過疎化の速度は上がるのだろう。
なんとか対策は無いのか。
多くの人が知恵を絞って、それでこの現実なのだから、簡単で有効な対策などないのだろう。
だが、目指すべき方向性自体はすでに明らかになっている。
上に見たように、仕事があれば人は残る。あるいは外から来る。
だから、仕事を生んで、お金を流し込むのが、最も期待される方法だ。
観光が盛んな南崎、三坂地区の数値を見れば、観光が過疎化対策の有効な手段とはなっていないことがわかる。規模が小さすぎるのだ。もっと大きな企業が必要だ。
商売には3つのレベルがある。
地元相手、大都市相手、世界相手だ。
地元相手の商売は必要だが、町の成長を牽引する力に乏しい。
大都市相手、あわよくば世界相手の商売で、日本中、世界中のライバルに、どの分野でどうやって戦って勝つのか、その戦略が無い限りは先細りだ。
その戦いに勝ち抜いた地区だけが、過疎化の蟻地獄から脱出することができるのだろう。
が、実は、もう一つ戦略がありえる。
日本の問題点は、生活にコストがかかりすぎることだ。
日本のパンは安全だ。だが1個100円もする。
千人に一人ぐらいはあたって死ぬかもしれないようなパンを売っても良いことになればどうだろう。
衛生管理にかかるコストは一気に下がる。
パンが1個1円になれば、そして台風が来たら崩れるかもしれないし家の中に蛇が出るかもしれないが家賃が百円の家、座ったら破れるかもしれないが1円の服、そんな村がもしあれば。
日本中から食い詰めた人が集まってくるだろう。
集まってきた人々を集めて新しい商売ができるかもしれない。格安の賃金で雇えるだろう。
よっくすは、それはいやだけど、実際にはそのほうが世界の現実に近いのではないだろうか。
世界の現実は今でも、多くの貧しい人が積み上げた労働の成果で、一部のエリートが豊かになっているのではないだろうか。
衰えたとはいっても、今の日本は本当に理想を体現したようなところがある。
過疎化のひずみは、理想と現実の再調整が必要になってきたことを示しているのかもしれない。