いつの間にか全国に多数の飛行場が開設され、日本中をくまなく覆っている。
だが、関東地方には飛行場がきわめて少ない。
離島を除けば、定期便がある飛行場は羽田、成田、調布、茨城の4ヶ所だけだ。
神奈川県、埼玉県、栃木県、群馬県の4県には飛行場がない(軍用の飛行場はある)。
ついでに言えば、山梨県にも無い。
一方で、北陸地方は面積で関東の1.3分の1,人口では8分の1にすぎないが。離島を除いても福井、小松、能登、富山、新潟の5空港を数える。
よく耳にする原因として、「首都圏に飛行場を作っても東京便を設定できないからだ」というものがある。
そこで、この点を検証してみよう。
下図は、便数が多い南九州の2空港の、週あたり便数だ。
鹿児島空港は週568便、宮崎空港は週336便もの離陸がある。「発着便数(離陸+着陸)」なら、この2倍となる。
そしてその内容を見ると、鹿児島では、東京・大阪・名古屋の三大都市圏行きが58%、宮崎では71%を占める。
そして、多くの離島を抱える鹿児島県の鹿児島空港では県内発着便(離島便)が大変多く、三大都市圏行きと離島便を除けば、わずかに週49便にすぎない。1日あたり7便だ。
一方で、離島がない宮崎県の宮崎空港では、三大都市圏以外の便が、週98便(29%)もあるが、実はそのうち91便(1日13便)は福岡行きである。
新幹線網から取り残されてしまった宮崎では、今でも飛行機が、域内の大都市である福岡への重要な足なのだ。
だが、話を宇都宮、あるいは前橋に置き換えてみたらどうだろう。
宇都宮、前橋にとって、域内の大都市といえば、それは東京にほかならないではないか。
そして、鹿児島から福岡行きの便が週7便しかないことは、新幹線で1時間半を要する鹿児島-福岡間ですら、飛行機便の営業が成立しないことを暗示している。
したがって、北関東に飛行場があっても、ほとんどどこに向かう定期便も期待できないことになる。
それは杞憂ではない。
これは、比較的首都圏に近い3空港の国内線定期便数を示したものである。
福島空港は週35便(1日5便)、松本空港は週21便(1日3便)、茨城空港は週42便(1日6便)である。
宇都宮に飛行場ができても、これに劣らない惨状になることは、想像に難くない。
だが実のところ、よっくすは宇都宮、そして前橋に飛行場は必要だと考えている。
はっきりいって、飛行機はかなり非効率的な輸送手段である。
鉄道と比較すると、エネルギー効率は8倍も悪く、乗用車並みである。
だが、鉄道は災害の度にインフラとしての脆弱さを露わにする。
迂回路を使えばなんとかしのげるトラックやバスとは違い、鉄道は災害不通の度に復旧に長期間を要するのが常である。
また、道路密度と比べると線路密度はあまりに低く、東海道本線や東北本線のような大幹線が被災すると、トラック・バスとは比較にならない高い輸送効率も災いして、代替輸送機関を確保できないのが常である。
有事の際にも同様の問題が発生することは容易に想像できる。
それは結局、敷設に大きな手間がかかること、そして長大な線路のどこが切れても輸送路が切れてしまうという問題点を反映している。
飛行機はそうではない。
長くとも数キロの滑走路さえ整備できれば良いのだから。
空港の整備はしばしば紛糾するという印象があるかもしれないが、紛糾するのはだいたい、経済上・軍事上の価値が高い空港に限られる。
むしろ経済の活性化を期待して歓迎される場合も多いのではないか。
反対が無ければ、飛行場の建設は鉄道の建設よりも容易だし、それはそのまま災害・有事の際の復旧の容易さを意味すると思うのだが。
そういう観点から見ると、海に面していないために県内に良い港湾が無い栃木県、群馬県にこそ、飛行場は必要なのではないだろうか。
だからいま必要なことは、そのような現状では平時にはたいして使いみちがないことが明らかな空港をもし建設したとして、そこから利益を生み出すような運用方法がないものか、そこに知恵を絞ることなのである。