自動車のサブスクリプション、早く言えば定額制は、電気自動車の普及には欠かせない。

なぜならば、バッテリー(電池)の経年劣化が無視できない一方で、素早い充電には、ステーション(交換拠点)での電池の交換が有利だと考えられるからである。

交換拠点では常に新品の電池を用意するわけにはいかないから、経年数が様々な電池が混在し、しかも利用者はそれを選べない。

一方で電池の経年劣化は無視できないから、時として著しく性能が低い電池をつかまされることもあり得る。

それを利用者に納得してもらうためには、定額制で何度でも電池交換ができるようにする他はないのである。




ところで自動車の定額制は、人々と公共交通の関係を一新する。

なぜならば、電池の定額制のみならず自動車の定額制が普及すれば、旅行先で気軽に自動車を利用することが可能になるからである。

これにより、公共交通で行った先で足がない、という問題が解決される。

現在でもレンタカーがあるが、少なくとも数千円の出費が必要であり、そこの敷居が大きく下がるのだ。

現在は、多少無理してでも自家用車で出かけていたような距離でも、一部の区間で公共交通を利用することで、もっと楽に移動できるようになる。


しかし、それは公共交通機関の利便性が十分に高ければ、という話である。

とくに、地方では公共機関の運行頻度が著しく低いことから、利用すれば所要の時間が大幅に増えてしまう。

これでは利用できない。

要するに、自動車の定額制によって公共交通のニーズは大きく高まるが、現在の公共交通はそれに対応していないのである。


もっとも、いくらニーズが高まっても、地方の鉄道やバスの利用者数は知れたものであり、気軽に増発などできない。

よく考えると、公共交通を利用する機会というのは県庁所在地に行くときと東京に行くときに限られるし、末端は自動車利用を前提と考えれば、そんなにたくさんの駅は必要無い。

たとえば宮崎県を例に考えよう。

宮崎県で公共交通を利用する場合、行き先は宮崎市と宮崎空港しかないのだから(福岡もあるが、ここでは考えない)、宮崎を中心にさん方向に路線が延びていればいいことになる。

そして駅の数もそんなに必要無い。

これだけなら、いまのJRの特急網でいいことになるが、問題はここからだ。

1時間に1本の特急にちりん号、2時間に1本の特急きりしま号では、到底ニーズに応えきれない。

最低限15分に1本はほしい。

もしくは、呼べば来るか、だ。

その代わり、1本1本は車輌1両もあれば十分であって、自家用車程度でも問題ないばあいもあろう。

そしてできるならば延岡~宮崎の80kmを1時間ぐらいで結んでほしい。

イメージとしては、延岡駅で自動車を乗り捨てて、駅でボタンを押せば15分以内に車輌が到着し、車内の行き先ボタンの中から宮崎駅を選べば、1時間ぐらいで宮崎駅に着いて、そこでまた拠点から自動車に乗る、といった感じだろうか。


すでにインフラが存在するという点では、第一の選択肢はあくまで鉄道、第二にバスであろうが、どちらもこのようなニーズには対応していない。

運転手の確保も難しいし、また特に鉄道の場合には急坂や急曲線に対応できず、加減速性能が著しく劣ることから車間を空けなくてはいけない。

これではとてもオンデマンド運行などには対応できない。

一方で、バスの場合は市街地の通行に難があり、専用道路を建設すれば鉄道よりもかなり広い敷地が必要だ。

それに、バスでも運転手不足の問題は避けられない。

結局、現在の公共交通の技術では、求められるニーズを満たしていないのだ。

新しいモードが開発されなければならない。

 

新しい公共交通に要求される要素は明らかとなった。

・高頻度運転、またはオンデマンド運転

・高速度

・拠点の絞り込み

これがリーズナブルな価格で提供されるべきであることは言うまでもない

これらから、新しい公共交通に求められる技術的要素も自ずと決まってくる

・無人運転

・高速度、高加減速

・安全性

少なくとも無人運転は必須だ。

そして安全性。30分に1本ぐらい、無人の車両を航行させて軌道を監視させる、といった感じになるだろうか。交差(鉄道なら踏切)の撤去は絶対必要だ。

動物の進入も防ぐ必要がある。

いろいろ問題はあるが、近未来には何らかの新しい公共交通が姿を現すだろうから、早く見てみたいものだ。

 

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