春は祭りの季節だ。
全国津々浦々で、思い思いの仕方で神様に豊年を祈念していることだろう。
見て楽しい祭りも多いと思うが、基本的に祭りは自分たちの気持ちを表すもので、自分たちのために行われるものだと、よっくすは思う。
ときには全国的に有名になって観光客が押し寄せるようなお祭りもある。
しかしお祭りというのは明日の生活をかけた必死で現実的な祈りであるし、またそれを楽しみに一年間、苦しい時も頑張るための心の糧でもある。
そこに必死になればなるほど、自分たちのためのもの、という以上の心のゆとりはなかなか生まれないし、またそのほうがむしろ見ていて美しいとよっくすは思う。
安楽山宮神社・安楽神社の春祭りは鹿児島県志布志市で行われている。
今日はこのお祭りを紹介する。
お祭りは2日間に亘って行われるが、まず1日目の午前に安楽山宮神社で神事が行われることにより始まる。
ここでは神事に付随して行われる正月踊りが有名である。踊りはyou tubeにも挙がっているから、興味のある人は見てみてほしい。
神事の中心はタノカン(田の神)と神職の「問答」であって、主役は田の神のはずだが、なぜか踊りのほうが圧倒的に有名である。
手の動きに特徴があって、手甲がひらりひらりと返るさまが美しい。
なお現場に行くとわかるが、田の神は主役然として振舞っており、それに対して踊り子たちもきちんと敬意を払っている。
(正月踊り/安楽山宮神社にて)
覆面をしているので誰が誰やらわからないが、腰から下がるサイノコ(猿の子)がかわいい。
よく見ると、踊り子ごとに思い思いの個性的なサイノコを下げている。
さて、安楽山宮神社での奉納を終えた踊り子軍団は、その後「庭めぐり」と称して、集落を順々に巡っていく。
太鼓、三味線、鐘などと踊り子の群れがぞろぞろと巡っていくのだ。
(庭めぐり=各集落での踊りの披露)
この集落集落をめぐるという点が、本来は「自分たちのためのお祭り」であることを端的に表している。
庭めぐりでの観客は各々の集落の住人がほとんどで、わざわざ自分たちのもとまで巡ってきてくれた踊りを見物にやって来る。
踊り子も、太鼓、鐘、三味線も、ほとんどがいずれかの集落の住人だから、自分の集落で踊りを披露するときは特に晴れがましい気持ちになるだろう。
そして訪れてきた踊りの一団に対して、各集落ごとに個性的な賄いを振舞ってもてなすのだ。
これは一団にとって最高の楽しみである。
そもそも見物に来た地元の方々の中にも、かつて踊りに参加したり、身内がかかわっていたりしていた方も多く、たとえ今は参加していなくても、自分たちの祭り・踊りという気持ちがある。
一方で、外から来た見物客はそのほとんどが安楽山宮神社、安楽神社のいずれかを訪れる。こちらは神社の境内に大勢の客が入り、たいへん賑やかである。
だから、興味のある方は安心して両社のいずれか(または両方)を訪れてみてほしい。
庭めぐりを続けた集団は、2日目の午後に安楽神社にたどり着く。
(正月踊り/安楽神社にて)
ここでも神事があり、踊りを披露する。ここの神事はカギヒキがあったりベブ(牛)の親子が出てきたりして、前日の安楽山宮神社とは趣向を異にしている。
その後、もう1つ2つ集落を回って踊りは幕を閉じる。
(夕陽とともに祭りは終わる)
今年、2018年のお祭りは2月10日と11日であった。次は一年後。
ここまで、やたらと「自分たちの祭り」を強調してきたが、それは参加するほうの気構えの問題であって、端的に言って珍しく、見ものとしてかなりおもしろい。
ご興味のある方は是非一度、ご覧になってほしい。
それととともに、読者の皆さまご自身が携わっておられる祭事があれば、どうかそれを大切にしてほしい。