ローカル線は、一般に速度が遅く、その点で競争力が低い。
速度を上げなければならないが、それには最高速度の引き上げもさることならが、路線の形の改良が必要だ。
ちょっとイメージしにくいかもしれないが、その「路線の形」がどれぐらい速度に影響を与えるか、検証してみよう。
ローカル線は遅い。
遅いが故に競争力が低い。
たとえば日南線の宮崎→志布志間は、91.1kmの道のりだが、この区間は最速列車でも2時間32分(12:18→14:50、表定速度32.3 km/h)を要する。
「表定速度」とは、停車時間等も含む距離を所要時間で割ったものだ。
これに対して「平均速度」とは、走っている時の平均の速度であり、表定速度のほうがより実際的である。
91.1kmといえば、自動車であれば、平均40kmで走れば2時間17分、平均60kmなら(法定速度違反だが)1時間32分で着く距離である。
遅い原因としては、単線で行き違いがあるからだ。その考えは正しい。
それに、日南線では旧式のディーゼルカーであるキハ40系が運用されていて、加速能力や登坂能力が著しく悪い。
それも正しい。
線路の規格が低いから、高速を出せない。
それも事実だ。
だがもっと細かく見てみよう。
下の表では、日南線の3区間を取り出して比較してみた。(えきから時刻表を参考にした)
伊比井(いびい)~北郷(きたごう)、榎原(よわら)~日向大束(ひゅうがおおつか)は、いずれも1駅だ。
また福島今町~志布志の間には2駅あるが、列車交換の設備はなく、この区間で行き違いを行うことはない。
つまりこれらの区間では、列車の行き違いによる速度の低下を考える必要が無く、純粋に車両と線路の性能を比較することができる。
一見して判るとおり、伊比井~北郷だけが非常に速い。この区間の表定速度は55.2km/hもあり、この速度で走ってくれれば宮崎~志布志は1時間39分で着いてしまうのだ。
それぐらい速ければ、宮崎市へ通勤する客も、宮崎空港を利用する客も、かなり日南線にシフトするだろう。
だが他の2区間は、行き違いが無いにもかかわらず表定速度が40km/hにも満たない。
実は伊比井~北郷はその間に長大なトンネルがあり、かなりの距離が直線である。
これに対して榎原~日向大束は峠越えの山道だし、福島今町~志布志は海沿いの断崖のようなところを縫うように走っている。
wikipediaによれば、日南線の最高速度は85km/hである。
線路の規格が高い幹線のように110km/h、120km/hといった速度を出せるわけではないが、考えてみれば85km/hでずっと走ってくれれば、自動車と比べてもかなりの高速度である。
ここに挙げた日南線の例で明らかなように、線路自体の規格が低くても、路線が直線化するだけでかなりの高速化を見込むことができるのだ。
そのことは、上の表に付した日光線の数値をみれば、いっそう明らかになる。
(日光線 下野大沢~今市)
再度同じ表を掲載するが、日光線の表定速度は、最速の列車では全線で60.8km/hもある。
電化・非電化の違いはあるが、日光線も最高速度は85km/hである。
(もっとも、乗り比べてみると日光線と日南線では乗り心地にかなりの差があり、実際の規格も相当差があると推測される)
これは、日光線にはかつて多数の急行列車が走っていたために、線形が良くなっているためだと考えられる。
単線で最高速度が低いままでも、これほどの高速度で運用することが可能なのだ。
さてそこでだが、列車の高速化には、線路の直線化がかなり効果を発揮することがわかった。
考えてみれば道路だって、地方ではかつてはかなりの幹線でも曲がりくねっており、舗装もされていなかった。
それから道路は舗装され、拡幅され、バイパスが開通しているのに、線路は旧態依然では競争力を失うのも当然だ。
最近もローカル線の存廃問題がたびたびニュースとなるが、もし地方が鉄路を残したいのであれば、その地方の責任で多少の貢献をしてもよいのでないか。
鉄道の存続を訴えるというのであれば、少なくとも線路の直線化のための用地の用意ぐらいは、地方の責任でしてもいい。