日光市の中禅寺湖は海抜1270mに位置するので、その周辺の中宮祠集落も同様に海抜1200mを越える場所に位置している。

さらにその奥の湯元集落は、1400mを越える。

毎日ふもとから、あるいはふもとへ通勤する人もおり、日光東照宮周辺は海抜600m程度、付近の中心である今市集落は海抜400m程度であるから、約1000mもの高低差を毎日往き来することになる。

中宮祠で飲み干したペットボトルに封をして今市まで下ると、ペットボトルはぺちゃんこになる。

日光市においてはこれらの高原集落の人口は少なく、単独の自治体を形成するには至っていない。




さてでは、日本ではどのくらいの高さまで都市が形成されているのであろうか。

国土地理院地図で、市役所の標高を調べてみよう。

海抜100m以上の位置に市役所が位置する都市は126ある。

もっとも、低標高の町についてはすべてを調べたわけではないのでもっとあるかもしれないが、少なくとも200m以上の都市については網羅したつもりだ。

日本で最も高いのは長野県茅野市。

市役所の位置は海抜802mだ。

ついで長野県岡谷市(781m)そして山梨県富士吉田市(773m)。

そのあとは諏訪市、大町市、塩尻市、佐久市、小諸市、駒ケ根市、伊那市、松本市と長野県の都市が8か所も続く。

長野県では、最も低地に位置する飯山市でも海抜315mであり、県全体が高原県といえる。

だいたいイメージとは合っているのではないだろうか。

海抜500m以上の都市は、山梨県、岐阜県、熊本県を除けば全て長野県の都市が占める。

実はかつては栃木県日光市も500mを越えていたのだが(561m)、平成18年に合併によって市役所が今市に移り(378m)、陥落となった。

入れ替わるように平成17年、合併によって熊本県阿蘇市が誕生し、関東・中部以外では初めて500m以上の都市が誕生することとなった。

郡部では、長野県川上村(1185m)と南牧村(1041m)だけが海抜1000mを越えている。


世界に目を向けてみよう。

とてもすべてを調べるわけにはいかないが、チベットのラサ、ボリビアのラパスはおよそ3600mもの高地に位置する。

わずか1000mの高低差でもペットボトルが潰れるのだから、こんな高さから海面に降りてきたらどんなことになるのだろうと思う。

世界最大の高原都市といえばメキシコシティ(2240m)だろう。郊外を含めれば人口2000万人を越えるこの都市の存在は、少なくとも日本の地理条件においては、高原でも産業が営まれて都市が形成されるのに支障がないことを示している。

高原に都市が形成されるか否かは、要するに資源や交通の条件によって決まるということだろう。

高原のイメージが強いスイスは、確かに高山に囲まれてはいるが、都市が形成されている高度自体はそれほどでもない。

むしろ、よっくすとしては、イランの首都テヘランやケニアの首都ナイロビといった、いかにも平原というイメージを持っていた都市が、意外に高地に位置することが印象的だった。

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さて以上のように、少なくとも日本においては高地といっても高度自体が都市の形成の障害になるわけではないことがわかった。

しかし高度があることは、交通の障害にはなる。

上信国境の碓氷峠は急峻な片勾配であることから、トンネルで勾配を緩和することができず、鉄道においては古くはアプト式ラックレールや近年では補助機関車などの手段が必要で、時間的に大きな障害となっていた。

現代は新幹線が高崎を出発するとすぐに上り勾配に入ってこの峠を越えているが、そこまでしてもなお北陸新幹線には急勾配用の特別な車両が用意されている。

トラックで行くにしても距離のわりに燃費もかかるし、何より道路建設費が嵩むために幹線道路の本数が少ないのが常である。

徒歩の時代であれば、信濃というところも名古屋~新潟と東京~北陸の交差点に位置し、交通の要衝として機能する余地はあっただろうが、いまや東京から新潟まで2時間もかからずに到達する時代だ。

水質が良いとか空気が薄いとか気圧が低いとか、何か高地ならではのメリットと、大都市である東京や名古屋に近いというメリットの合わせ技で、世界に食い込んでいくことを考えるしかないのだろう。

高原都市の企業を代表して、エプソンには頑張ってほしいと思う。

 

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